第9ステージ
ル・ブール・ドワザン〜ガップ(184.5Km)

レーサーは常に危険と隣り合わせだ。100年の間にツールでも既に3人の尊い命が失われている。そして今日、ランスの最大のライバルとされていたJ・ベローキ(ONE)が最後の下りで落車し、リタイアしてしまう。競り合えば競り合うほど、その可能性は高まるのであり、事故が起こってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。もちろん、観戦者はタフな闘いを期待する。しかしそれは選手たちが無事であってこそ楽しめるものなのだ。

ベロ−キ落車でリタイア。ビノクロフ優勝で21秒差に

序盤からアタックの連続
最初の山岳ポイント、ロターレ峠までの登りで次々とかかるアタックで14人が抜け出し、先頭集団を形成する。マイヨ・ジョーヌを擁するUSPSは動じることなく、淡々と集団をリード。
次の超級、イゾアール峠までに先頭集団は7人に絞られた。その中には総合10位、昨日までランスと総合成績で3分19秒差のJ・ヤクシェ(ONE)も含まれている。第2山岳ポイントを2位通過したヤクシェの集団は残り54キロ地点で大集団と6分差。現時点では彼が暫定のマイヨ・ジョーヌになってしまった。
それまで集団のなかで沈黙を守っていたベローキが動いたのは第3山岳ポイント手前。昨日同様、果敢に仕掛けた彼は後続を振り切ろうとするが、そうはさせないランス。I・マヨ(EUS)、T・ハミルトン(CSC)、J・ウルリッヒら他チームのエースたちも追走する。しかしこのアクションもここまで。集団は先頭4人との差を2分15秒にまで縮めながら山頂を通過し、最後の山岳ポイントを目指す。
先頭集団で協調崩れる
それまで協力して大集団との差を広げてきた先頭7人だったが、第3山岳ポイント前でヤクシェ、I・パッラ(KEL)、A・カセロ(TBI)に絞られていた。その後平地区間でF・ペルゾッティ(ALS)が追いつき、4人編成に。最後の登りを前に、先頭交代をするしないから仲間割れ、築いてきたアドバンテージを一気に切り崩してしまう。
最後の山岳ポイント、ロシェット坂は平均斜度6.7%。3級といえども厳しい登り。3.9キロの登り半ばで抜け出したのは、昨日2位のA・ビノクロフ(TEL)だ。先んじていた4人も既にヤクシェ、パッラに絞られていたが、ビノクロフはその2人も快調なスピードで追い抜き、独走態勢に。総合成績で1分17秒しか離れていないビノクロフをこのままのペースで独走させるわけにはいかないランスが、先頭を引きながら山岳ポイントを通過。400mの高低差を6キロで下りきるとゴールの街、ガップだ。
ベローキ落車
しかしこの下りで先を急いだのはベローキ。彼にしてもビノクロフとの差が37秒しか離れていないからだ。ここで悲劇は起こった。下りの途中、暑さのために溶けだしたタールで後輪をスリップさせた彼は、慌ててブレーキレバーを引き、ホイールからタイヤが外れてしまうほど後輪をロックさせ落車。道路に叩きつけられ救急車で搬送されてしまった。
すぐ後ろを走っていたランスもベローキを避けるために、道を逸れダートへ突っ込んでしまう。しかし事故が起こったのがヘアピンカーブの入り口だったため、ダートをそのまま走り、カーブをショートカットするように本線に復帰。間一髪で事なきを得た。集団に合流した際、かつての盟友T・ハミルトンが「大丈夫だったか」とランスを気遣うシーンが印象的だ。
ビノクロフのステージ優勝−あなどれない存在
一方独走を続けるビノクロフは、快調に飛ばし続け、集団に36秒差をつけ初優勝。ゴール時には、先日生まれた子供へ捧げる優勝としたのか、両手を左右に揺らし、「ゆりかご」のポーズを決めた。
ランスは4位で集団ゴール、ビノクロフとの差は21秒に縮まった。ここにきて、今年の春先から調子が良く、直前のツール・ド・スイスでも総合優勝しているビノクロフが急浮上。今ツールでの活躍からも、ランスにとって彼の存在は注目すべきものとなったはずだ。
残念な結果となってしまったが、「今年は、積極的にランスを攻めにいく」と決め、行動していたベローキ。見事な足で初優勝を飾ったビノクロフ。瞬時の正確な判断で危険を回避したランス。レース最後まで選手たちの「勝利への執念」が感じられた一戦だった。