第19ステージ
ポルニック〜ナント(49.0Km 個人TT)

ランスは5連覇を成し遂げるために、厳しいトレーニングを積み重ねてきた。もちろんバイクにも、そのパフォーマンスを最大限に引き出す完璧な性能を求める。今ツールで彼が使用したバイクは、エンジニアたちが技術の粋を投入し、これまでのなかで最もランスの要求を色濃く反映させたモデルとなった。
第19ステージの個人タイムトライアルは、それぞれのパフォーマンスが最も試される舞台。彼が心拍数を上げ疾走している間、エンジニアたちの心拍数も上がり続けていたに違いない。

マイヨ・ジョーヌ争い、遂に決着

ミラー、落車するも好タイムでゴール
今ツールのマイヨ・ジョーヌをめぐる最終決戦の場となったフランス西部地方は雨。3週間におよぶ厳しいステージレースを生き残ってきた148選手が出走する。雨の影響で路面は滑りやすく、落車する選手も数人出ている。
海からの追い風を受け、平均速度50キロ/hを超える記録が続出。プロローグで0.08秒という僅差で破れたD・ミラー(COF)が15キロ地点で落車したものの、平均速度54.36キロ/h、54分05秒の好タイムを叩き出し、現在暫定トップだ。
ミラーの記録を誰も塗り替えられないまま、いよいよラスト2選手、J・ウルリッヒ(TBI)とランスが他の誰よりも大きな歓声を受けて登場する。
対照的な2選手の精神状態
このステージですべてを出し切らねばならないウルリッヒは、スタート台に上がる前からアドレナリン噴出。チームスタッフに「サングラスはどこだ」と大声を張り上げるほどの興奮状態。昨日までの総合タイム差はランスから1分5秒遅れであり、しかもランスのコンディションは上向いている。この状況で彼に残された道はただひとつ。コンディションの悪さなど省みず、全行程を攻め続けるのみだ。
スタート台を勢いよく飛び出したウルリッヒは力強くペダルを踏みつけ、オーバースピード気味ではないかと感じるほどの速度で最初のコーナーを曲がっていく。
2分後にスタートするランスは、雨を考慮しサングラスの着用はなし。スタート台から知人を見つけ、反応するほど周囲の状況が良く見えている。スタート後も落ち着いた様子は変わらず、ウルリッヒとは対照的といえるほど慎重にコーナーをクリアしていった。
ほぼ互角の勝負
すべてを今ステージにぶつける2人のライディングが映し出され、2選手を追走するオートバイに取り付けられたGPSシステムがタイム差を常時レポートする。ランスが数秒リードすれば、数分後にはウルリッヒが逆転。15キロ地点の第1計測ポイントでは、前回の個人TT同様、再び同タイムで通過する。その後も2人の間にタイム差はほとんど生じない。まるで2分間隔を保つための見えない糸が、たるみなく張られているかのようだ。
しかし、残り10キロに近い右コーナーでアクシデントが発生する。ウルリッヒが前輪を滑らせ、落車してしまったのだ。彼はバイクもろとも路面を滑りながら、反対側の路肩に設置されたセーフティー・フェンスに激突してしまう。残り少なくなる距離と広がらないランスとの距離...危険なコーナーをも攻め続けなければならなかった彼の選択に、無情な結末が訪れてしまった。
事実上の決着
この事故を無線で受けたランスは、これまで以上に慎重に走り始めた。滑りやすい白線をパスする際にはペダルを止め、コーナーでは注意深く減速する。はやる気持ちを抑えながら、残された10キロを消化した。
ミラーに14秒遅れの3位となったが、ランスは5連覇をほぼ手中にした喜びを右手のガッツポーズで表現。彼の力強いパフォーマンスに、観客から大きな歓声が沸き上がった。
予想外のアクシデントでランスを攻めきれなかったウルリッヒだったが、彼が見せたファイトは最上級の賞賛を集めた。そして2選手の拮抗した実力の闘いは、彼らが今まで行ってきたマイヨ・ジョーヌ争いを凝縮したかのような素晴らしいものだった。
今ツールの注目は、まだ確定していないマイヨ・ベールに移っていく。明日、わずか2ポイント差にいる豪州選手2人の闘いが決着する。
各計測ポイントでの記録タイム推移
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ウルリッヒ |

ランス |
| 第1計測ポイント (15.0Km) |
15'42" |
15'42" |
| 第2計測ポイント (32.5Km) |
35'19" |
35'22" |
| 第3計測ポイント (42.0Km) |
45'40" |
45'30" |
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